【行政法】2章 3.行政行為の附款
◆意義
俯瞰...行政行為の効果を制限したり、特別な義務を課すため、主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示をいう。
例)運転免許(主たる意思表示)にAT限定(従たる意思表示)
※意思表示を必要とする法律行為的行政行為にのみに付することができ、準法律的行政行為には付することができない。
附款の根拠
①法律の根拠があれば当然採用
②行政庁の裁量で附款を付しうる場合も可能
附款の瑕疵…行政行為と附款は可分と不可分の場合がある
①附款が行政行為の重要な要素になっていれば行政行為全体が無効の瑕疵を帯びる
②そうでない場合は附款だけ無効、行政行為自体は無効にならない
◆種類
条件...行政法行為の効果を、発生不確実な将来の事実にかからせる意思表示をいう。
①条件の成就によって効果が生じる・・・停止条件
②条件の成就によって効果が消滅・・・解除条件
期限...行政法行為の効果を、発生確実な将来の事実にかからせる意思表示をいう。
負担...相手方に特別な義務を命じるものを言う
例)運転免許で例えるとメガネの着用義務
撤回権の留保...許認可などの行政行為をするにあたり、相手が義務違反を起こした際に行政行為を消滅させる旨を内容とする附款を指す。
法律効果の一部除外・・・法律効果の一部を発生させない。
例)出張費が出ない出張
◆条件と負担の違い
条件...事実が発生しない場合は本体である行政処分の効力は生じない
負担...相手方が従わなくても行政処分の効力は失われない
例)メガネ無く運転しても運転免許は無効にならない
◆限界
①法律制限の範囲内・裁量権の逸脱・濫用不可。
②他事考慮禁止・・・行政目的と関係のない附款を課すことは出来ない。
③行政比例の原則・・・附款によって相手方に課す義務は必要最小限でなければならない。
【行政法】2章 2.行政行為の分類
行政行為の分類
法律行為的行政行為(行政庁の意思表示を要素とする行政行為のこと)
①命令行為(国民が本来有する自由を規制する行為)
a)下命...国民に一定の行為をする義務を課す行為
例)違法建築物の除却命令
⇅
b)免除...特定の場合な一定の義務を解除する行為
例)学齢児童の就学の免除、予防接種の免除、納税の猶予
c)禁止...一定の行為をしてはならない義務
⇅
d)許可...もともと有する自由を公益上の理由から法令などで禁止にし、特定の者が条件を満たした場合に禁止していたことを解く行為(害悪が無い場合に回復)
例)風営法の許可。デモ行進の許可、運転免許、医師免許
②形成的行為(国民が本来有していない権利を設定する行為) 特許 認可 代理
認可...第三者の行為を補充して、その法律上の効果を完成させる行為 (公益の見地から介入 ⇒ )
例)農地移転の許可、ガス・電気料金の値上げ許可
※認可を受けないでなした行為は原則として無効
特許...もともと有していない特定の権利、法律関係を設定する行為(本来持っていな機能を与える⇒行政に自由裁量が認められる)
例)公務員の任命、鉱業権設定の許可、公有水面埋立免許、鉄道事業の許可、河川道路の許可
準法律行為的行政行為(行政庁の意思表示がない行政行為)
確認...特定の事実を公に認め、確定し宣言する行為
例)発明の特許
公証...特定の事実の存否を公に証明する権利
例)選挙人名簿への登録、戸籍への記載
通知...特定あるいは不特定に一定の事項を知らせる行為
受理...他人の申し出を有効な行為として受領する行為
【行政法】2章 1.行政行為の意義と諸効力
◆行政行為の意義
行政行為は行政庁の「処分」と称されることもある。
★ここは押さえる!
a)権力的(一方的)行為 ⇔ 双方の合意(行政契約)
b)対外的行為 ⇔ 内部行為(訓令・通達)
c)個別・具体的行為 ⇔ 一般的・抽象的(行政立法)
d)法的行為 である。 ⇔ 事実行為(行政立法・行政計画)
◆行政行為の諸効力
・公定力…違法であっても、国民が不服申し立ての手段をとって取り消しを得るまでは有効なものとして通用させ、関係人拘束する。
※ただし重大かつ明確な瑕疵がある場合は取り消すまでもなく無効
・不可争力…行政行為の違法性はいつまでも争えるわけでなく、一定期間経過後は国民側から争えなくなる。
・自力執行力…行政行為によって課せられた義務を国民が履行しない場合、行政庁は裁判判決を必要とせず自らの判断で強制執行し、義務内容を実現しうる力を言う。
・不可変更力...権限機関がいったん裁断作用を下した以上は、自らその判断を履がえしえない力をいう。
※裁断作用以外の行政行為は時期に応じた要請されることもあるから、不可変更力は発生しない。
◆公定力の限界
1無効な行政行為・・・ただし重大かつ明確な瑕疵がある場合は取り消すまでもなく無効
2国家賠償請求訴訟・・・取り消し訴訟を起こして公定力を排除する必要が無く、直接国家賠償請求することができる
3刑事訴訟・・・行政の違法な義務を違反した者が刑事裁判で無罪を主張する場合は違法な行政行為の公定力を排除する必要はない。
【行政法】1章 2.公法と私法
◆伝統的理論(三分説)
・権力関係・・・①税金の徴収など公権力が私人を一方的に支配しているため、私法の適用は排除される。
・非権力関係・・・②公法上の管理関係・・・水道や道路の維持管理は行政と私人が対等であるため私法が適用される。
③私法関係・・・文具の購入は私人と対等の立場である。
公法と私法
公法・私法二元論(2つ成り立つ)
①論拠⇒裁判所の二元制 司法裁判所と行政裁判所、会計法30条は二元論前提の考え
②批判⇒適用法文を決める時に区分や必要ない
公法と私法の性質
公法・・・行政法や刑法⇒縦の関係・公益の実現
私法・・・民法や商法⇒横の関係・私益の調整
◆私法の適用
私法の適用…判例は個別の法令の趣旨目的から私法の適用を判断している
自作農創設特別措置法による農地買収…民法177条の適用無し
公営住宅の利用関係…公営住宅の使用には公営住宅法・条例が特別法として優先適用されるが、規定が無いときは一般法たる民法・借地借家法の適用有り
会計法30条事件⇒損害賠償の消滅時効は行政法により5年か、民法により10年か。⇒5年なのは行政の便宜を考慮したから。安全配慮義務違反は偶発的におこる事故であり、大量発生するものではないので、会計法30条を適用する必要は無く10年である。
【行政法】1章 1.行政法とは何か
◆控除説
・行政は国家作用から立法と司法を引いたもの。
◆行政法の分類
①行政作用法…行政活動に関する法 例)行政代執行法、土地収用法
②行政組織法…行政内部の組織について規律する法 例)内閣法、地方自治法
◆法律による行政の原理
①法律の優位…法律の定めに違反して行われてはならない。
②法規想像力の原則…行政立法は法律の授権なくして行うことができない。
③法律の留保…行政活動を行うためには法律の根拠が必要
※法律の留保の内訳
侵害留保・・自由と財産を侵害する場合のみ法律の根拠が必要
全部留保・・あらゆる行動に法律の根拠が必要
権力留保・・公権力の行使としての性質をもつ場合には法律の根拠が必要
・成文法
条約・・・国家間の文書による合意
法律・・・国会が憲法を元に制定する法
命令・・・行政機関が制定する法
条例・・・地方公共団体の議会が制定する法
・不文法
1 慣習法・・・人為的行為の一定の様式
2 判例法・・・同一内容の判決の繰り返し
3 法の一般原則・・・法令上明示されていない普遍的原理。
a.比例原則・・・目的を達成するために国民に必要最小限度以上の不利益を貸してはいけない。
b.平等原則・・合理的理由なくして差別はダメ
c.信義誠実の原則・・・誠実に取り組む。